「自分でやったほうが早い」
仕事をしていると、そう思うことはないでしょうか。
特に管理職になると、部下に任せるより自分でやったほうが早く終わる仕事はたくさんあります。
私自身、課長になってから何度もそう思ってきました。
しかし、部下を育てながら仕事をするようになってから、少しずつ考え方が変わりました。
本当に仕事ができる人は、自分ですべての仕事を抱え込む人ではない。
私は今では、そう考えています。
自分でやったほうが早い。でも、それでは部下は育たない
管理職になりたての頃は、部下がやるより自分がやったほうが早い仕事なら、自分でやってしまいがちです。
間違いも少なくなりますし、説明する時間も必要ありません。
「俺がやったほうが早い」
そう考えてしまうのも無理はありません。
でも、それを繰り返していると、いつまで経っても部下はその仕事を覚えられません。
管理職が仕事を抱え込めば、一時的には効率が良くても、長い目で見ると組織が成長しないんです。
管理職になると、仕事のやり方そのものが変わると感じています。実際に課長になって感じた違いについては、「仕事ができる人ほど管理職に向いている?課長になって分かった本当の違い」でも書いています。
そこで私は、多少時間がかかっても、できるだけ部下に仕事を任せるようになりました。
仕事を任せるメリットは3つある
部下に仕事を任せることには、単に自分の負担を減らす以上の意味があります。私が課長として実感しているメリットは、次の3つです。
- 部下が育つ
- 自分の時間が増える
- チームが止まらなくなる
部下が仕事を経験することで、できる仕事が増えていきます。その結果、管理職は細かい実務から少しずつ離れ、より重要な判断や改善に時間を使えるようになります。
さらに、一人しかできない仕事が減れば、自分が休んだときや異動したときでもチーム全体の仕事は止まりません。
この3つのメリットを実感してから、私は「自分でやったほうが早い」という考え方だけで判断しないようになりました。
任せるということは、丸投げすることではない
ここは大事なところです。
仕事を任せることと、仕事を丸投げすることは全く違います。
「これやっといて」
これだけで終われば、ただの丸投げです。
私が意識しているのは、最初は確認しながら任せて、できるようになってきたら少しずつ任せる範囲を広げることです。
最初から完璧にできる人はいません。
失敗することもあります。
それでも、自分で考えてやってみる経験を積ませる。
そして必要なところだけ上司がフォローする。
これを繰り返していくことで、少しずつ「任せられる仕事」が増えていきます。
実際に部下に難しい仕事を任せてみた
私が実際に部下に仕事を任せた中で、印象に残っている仕事があります。
詳しい作業内容はここでは書けませんが、製造現場の中でも、ある程度の技術や経験がなければ難しい作業です。
単純に手順を覚えればできるという仕事ではありません。
仕事全体を理解していて、ある程度仕事ができるようになっていないと、任せるのは難しいと私は考えていました。
ある時、
「この部下ならできるんじゃないか」
と思い、その仕事を任せてみることにしました。
正直、最初から完璧にできるとは思っていませんでした。
ところが、実際にやらせてみると、ちゃんとできたんです。
もちろん、何回かやる中では苦労していました。
私自身がやった場合と比べれば、作業スピードもまだ遅い。
仕上がりの見栄えについても、私のほうが上だと思います。
それでも、そこで私は考えました。
「製品として問題なく仕上がっているなら、任せてもいいんじゃないか」
管理職になってから、ここはかなり意識するようになりました。
自分と同じスピード、自分と同じ仕上がりを求めてしまえば、いつまで経っても仕事を任せられません。
もちろん、品質に問題があるなら話は別です。
しかし、製品として十分な品質を確保できているのであれば、多少時間がかかったとしても、経験を積ませることのほうが大切な場合があります。
今では、その仕事はその部下に任せています。
私がやったほうが早い場面もあるかもしれません。
それでも、彼がその仕事を任されることで経験を積み、さらにできる仕事が増えていく。
そして私自身も、別の仕事に時間を使えるようになる。
これこそが、仕事を任せる意味なんだと思っています。
部下が成長すると、自分の仕事も楽になる
部下に仕事を任せるようになると、最初はむしろ大変です。
教える時間も必要ですし、確認もしなければなりません。
「こんなことなら自分でやったほうが早かった」
と思うこともあります。
私自身もそう感じることがあります。
でも、そこで諦めずに任せ続ける。
すると、ある時から状況が変わってきます。
今まで自分がやっていた仕事を、部下が一人でできるようになる。
さらに、その部下が別の仕事まで覚えていく。
そうなると、今度は自分が細かい仕事から少しずつ離れられるようになります。
部下を育てることは、自分の仕事を減らすことにもつながります。
もちろん、それだけが部下を育てる理由ではありません。
自分が休んだときや、別の仕事をしているときでも、チームが止まらなくなるからです。
管理職になると、自分の仕事だけでなくチーム全体を見る難しさがあります。その現実については、「課長になってから毎日しんどい人へ|実際になってわかった管理職の現実」でも詳しく書いています。
「自分より上手くできないから任せない」は違う
管理職になってから、もう一つ感じるようになったことがあります。
それは、
「自分より上手くできないから任せない」という考え方では、人は育たない
ということです。
部下が自分と同じレベルになるまで待っていたら、いつまで経っても仕事を任せることはできません。
私が実際に任せた部下も、最初から私と同じスピードでできたわけではありません。
見栄えも私のほうが上でした。
それでも、製品として必要な品質は確保できていた。
だから私は任せることにしました。
そこから経験を積めば、スピードも技術も少しずつ上がっていきます。
任せることで上手くなっていく。
私はこれが人を育てる上で大切なことだと思っています。
「任せられる人」が増えると、チームが強くなる
一人の人間がどれだけ仕事ができても、その人がいなければ何も進まない。
そんな状態では、強い組織とは言えません。
逆に、
「この仕事はAさんに任せられる」
「この仕事ならBさんに任せられる」
という状態になれば、チーム全体で仕事を回せるようになります。
私は課長として、個人の能力だけではなく、チームとして仕事が回る状態を作ることも自分の仕事だと思っています。
だからこそ、できる人にさらに仕事を集中させるのではなく、できるようになるまで仕事を任せることを意識しています。
それでも「任せるのが怖い」と思う
もちろん、部下に任せることには不安があります。
「失敗したらどうしよう」
「ちゃんとできるかな」
「結局、自分がやり直すことになるんじゃないか」
そう思うこともあります。
でも、失敗しないように全部取り上げてしまったら、部下はいつまで経っても成長できません。
だから私は、取り返しのつかない失敗にならないように注意しながら、ある程度は任せるようにしています。
失敗したら、そのときに一緒に考えればいい。
最初から完璧を求めるのではなく、少しずつできることを増やしていく。
それが人を育てるということだと思っています。
管理職になって分かった「任せること」の大切さ
課長になってから、仕事に対する考え方はかなり変わりました。
以前は「自分がどれだけ仕事をこなせるか」を考えていたと思います。
でも今は、
「自分がいなくても仕事が回る状態をどう作るか」
を考えるようになりました。
そのためには、部下に仕事を任せる必要があります。
もちろん、すぐにはうまくいきません。
教える時間も必要ですし、失敗もあります。
それでも、長い目で見れば、その時間は決して無駄ではありません。
仕事を抱え込んで、自分だけができる状態を作る。
それよりも、
自分ができる仕事を、他の人にもできるようにする。
管理職としての考え方や、実際に感じたプレッシャーについては、「課長になって一番きついのは仕事じゃない|人間関係のストレスを実体験で語る」もあわせて読んでみてください。
そのほうが、チームにとっても、自分にとっても大きな意味があります。
最初は自分でやったほうが早いかもしれません。
それでも、一度仕事を任せてみる。
そして、部下が少しずつできるようになっていく姿を見る。
その瞬間に、
「任せてよかったな」
と思えることがあります。
仕事ができる人とは、何でも自分一人でできる人だけではありません。
自分の仕事を任せられる人を増やせる人。
私は、これも仕事ができる人の大切な条件だと思っています。
