仕事が遅い人=仕事ができない人、ではない。課長になって気づいたこと

「仕事が遅い人は、仕事ができない」

以前の私は、どこかでそんなふうに考えていたと思います。

仕事には納期があります。自分の仕事が遅れれば、次の工程や周りの人にも影響が出ます。だから、仕事が早い人が頼りになるのは間違いありません。

でも、課長として部下を育てる立場になってから、考え方が変わりました。

仕事が遅いからといって、仕事ができないとは限らない。

実際に、最初は仕事に時間がかかっていた部下が、今ではほとんどの仕事を任せられるまでに成長しました。

今回は、現役課長として部下を見てきた経験から、仕事の速さだけでは分からないことについてお話しします。

仕事が遅い人には、それぞれ理由がある

「仕事が遅い」といっても、理由は人によって違います。

例えば、こんなケースがあります。

  • 経験が少なく、仕事の進め方がまだ身についていない
  • 間違いがないか、一つひとつ確認しながら進めている
  • 分からないことを自分で考えたり、質問したりしている
  • 仕事の優先順位や段取りがうまく整理できていない

これらをすべて同じ「仕事が遅い」という言葉で片づけるのは、少し違うと思います。

経験が浅い人なら、最初からベテランと同じスピードで仕事ができるわけではありません。

もちろん、時間がかかる原因をそのままにしていいわけではありません。

ただ、まずはなぜ時間がかかっているのかを見極めることが大切です。

原因が分からなければ、適切な教え方もできないからです。

最初は仕事が遅かった部下が、今ではほとんどの仕事を任せられる

実際に、私の部下にも仕事を慎重に進めるタイプの人がいます。

最初から仕事が早かったわけではありません。

分からないことがあれば質問してきますし、自分で考えてから進めようとするので、一つひとつの作業に時間がかかることもありました。

でも、私はそれを悪いことだとは思いませんでした。

何も考えずに遅いわけではなかったからです。

自分で考える。分からなければ質問する。教えてもらったことを覚え、次は自分でできるようにする。

そうやって少しずつ仕事を身につけていきました。

その結果、今ではその部下にほとんどの仕事を任せています。

最初は時間がかかっていた仕事でも、経験を積めばできるようになる。

その姿を実際に見てきたからこそ、私は「仕事が遅い」という理由だけで、その人の能力を判断しないようになりました。

部下を育てるうえでは、仕事のやり方を教えるだけでなく、自分で考えて動けるようにすることも大切です。詳しくは、「部下を育てるとは?仕事を教えるだけでは成長しないと課長になって気づいたこと」でも紹介しています。

「遅い」と「慎重」は同じではない

仕事に時間がかかっていても、その中身を見る必要があります。

例えば、間違いがないか確認している人と、何をすればいいか分からず手が止まっている人では、必要な対応が違います。

前者なら、確認の精度を保ちながら効率を上げる方法を考えればいいかもしれません。

後者なら、仕事の手順や判断基準を教える必要があるかもしれません。

また、分からないことを質問している人に対して、ただ「もっと早くやって」と言っても、根本的な解決にはなりません。

むしろ、質問することをためらい、分からないまま仕事を進めてしまう可能性もあります。

大切なのは、仕事の遅さだけを見るのではなく、どこで時間がかかっているのかを確認することだと思います。

もちろん、慎重であれば何でもいいわけではありません。必要以上に確認を繰り返しているなら、どこまで確認すれば十分なのかを教える必要があります。

慎重さを活かしながら、少しずつ効率も上げていく。それが、上司に求められる関わり方ではないでしょうか。

仕事が早い人でも、必ずしも効率がいいとは限らない

逆に、仕事がものすごく早い人が、必ずしも優秀とは限りません。

これは自分の部署ではなく、他部署で実際に見かけたケースです。

その人は仕事を進めるスピードがとても速く、一見すると「仕事ができる人だな」と感じました。

ところが、勢いよく仕事を進めたあとに大きなミスが見つかり、かなりの部分をやり直している場面を何度か見かけました。

最初の作業が早くても、その後に大幅な手直しが必要になれば、結果的には時間がかかります。

最初に少し時間をかけて確認していれば、防げたミスもあったかもしれません。

もちろん、仕事が早いこと自体は大きな強みです。

ただ、作業の速さだけを見て評価するのは危険だと感じました。

「早く終わらせる」と「効率がいい」は違う

仕事の効率を考えるとき、単純な作業時間だけでは判断できません。

例えば、次のような点も大切です。

  • ミスや手直しを減らせているか
  • 次の工程に影響を出していないか
  • 必要な報告や相談ができているか
  • 同じ失敗を繰り返さず、次に活かせているか

10分で終わった仕事でも、その後に1時間のやり直しが発生したら、本当に効率がいいとは言い切れません。

反対に、最初に少し時間をかけて確認し、一度で正確に終わらせたほうが、結果的に効率がいいこともあります。

製造現場では、自分の作業だけでなく、次の工程や周りの人への影響も考える必要があります。

だから私は、仕事の速さだけでなく、どんな結果につながっているかまで見ることが大切だと思っています。

実は私自身も、どちらかというと仕事が遅いタイプだった

そう考えるようになった理由の一つには、自分自身の経験もあります。

私も、どちらかというと仕事が早いタイプではなかったと思います。

分からないまま勢いで進めたり、何も考えずに突っ走ったりすることはありませんでした。

その分、仕事を覚えるのにも時間がかかったと思います。

それでも、一つずつ覚え、分からないことを確認し、経験を積んできました。

今、自分が課長になって部下を育てる立場になったからこそ、当時の自分のことも含めて、仕事の速さだけでは分からない部分があると感じています。

最初から何でもできる人ばかりではありません。

経験を積んで、少しずつできることを増やしていく人もいます。

だからこそ、今できていることだけでなく、これから成長できるかどうかも見ていきたいと思っています。

課長になってからは「前より成長しているか」を見るようになった

部下を見るとき、今の私は「今どれくらい早く仕事ができるか」だけではなく、以前と比べて成長しているかも見るようになりました。

例えば、

  • 前は何度も質問していた仕事を、自分で判断できるようになった
  • 時間がかかっていた作業を、以前よりスムーズに進められるようになった
  • 教えてもらったことを覚え、同じような問題に対応できるようになった
  • 以前は任せられなかった仕事を、一人で進められるようになった

こうした変化があるなら、私は評価したいと思います。

もちろん、成長していれば納期を守れなくてもいい、という話ではありません。

求められる期限や品質を意識しながら、できることを増やしていく必要はあります。

ただ、今はまだ仕事が遅くても、確実に成長している人なら、これからもっと頼れる存在になる可能性があります。

実際に私の部下も、そうやって成長してきました。

部下の仕事が遅いとき、上司は何をすればいいのか

部下の仕事が遅いと、上司としてはつい「もっと早くやって」と言いたくなることがあります。

納期がある以上、スピードを求めること自体は悪いことではありません。

ただ、それだけでは解決しない場合もあります。

私なら、まず次の点を確認します。

1. どこで時間がかかっているのかを確認する

仕事の手順が分からないのか、判断に迷っているのか、確認に時間をかけすぎているのか。

原因によって、必要な指導は変わります。

2. 仕事の進め方や優先順位を教える

経験が少ない人は、どこから手をつければいいのか分からないことがあります。

仕事の順番や、先に確認しておくべきことを伝えるだけでも、進めやすくなる場合があります。

3. 少しずつ任せる範囲を広げる

最初から完璧を求めるのではなく、できるようになった仕事から任せていく。

そして、必要なところを確認しながら、少しずつ一人でできる範囲を広げていく。

私自身、部下を育てる中で、この積み重ねが大切だと感じてきました。

部下への任せ方については、「仕事ができる人ほど仕事を抱え込まない|現役課長が部下に仕事を任せる理由」でも詳しく書いています。

4. 前よりできるようになったことを伝える

仕事が遅い人は、自分の成長に気づいていないこともあります。

以前より早くできるようになったことや、一人で判断できるようになったことを具体的に伝える。

そうすれば、本人も何が身についたのかを理解しやすくなります。

ただし、改善が必要な点があるなら、それも具体的に伝える必要があります。

成長を認めることと、課題を指摘することは両立できます。

「今は遅いだけ」なのか、「改善が必要な状態」なのか

同じ仕事の遅さでも、背景は違います。

経験を積むにつれて少しずつできるようになっている人なら、必要な指導をしながら成長を支えることが大切です。

一方で、何度教えても同じところでつまずく、優先順位を考えずに仕事を進めてしまう、納期への意識が薄いといった場合は、具体的な改善が必要です。

「仕事が遅いからダメ」と決めつけるのでもなく、「慎重だから仕方ない」と何も改善しないのでもありません。

原因を確認し、本人に必要なことを伝え、変化を見ていく。

それが、部下を育てる立場として大切なことだと思います。

本当に仕事ができる人とは

課長として部下を見てきて、私が思う「本当に仕事ができる人」は、単純に作業が早い人ではありません。

仕事を覚え、分からないことを確認し、教えてもらったことを次に活かす。

自分で考えて行動し、必要なときには周りと協力する。

そして、経験を積むにつれて仕事の精度やスピードも上がっていく。

そういう人は、最初は目立たなくても、時間が経つほど頼れる存在になっていきます。

私自身も、どちらかというと仕事が遅かった側でした。

そして今、課長として部下を育てる立場になりました。

だからこそ思います。

仕事が遅い人=仕事ができない人、ではありません。

見るべきなのは、なぜ時間がかかっているのか。そして、経験を積む中で成長しているのか。

仕事の速さだけで人を判断するのではなく、その人の仕事の中身や成長まで見ること。

それも、部下を育てる上司の大切な仕事なのだと思います。